アクセス解析 忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

君の知らない物語

櫂くんすら出ていませんが櫂ミサだと言い張る!
アカリちゃんの性格はまだ分からないので違ったらすみません。。


 
本の世界の恋愛みたいにドラマチックでもないし、夜ドラマのように劇的でもなければ、漫画のように運命的でもない。理由もあるようで、実はない。
さらにいうと、好きだという確証もない。それは羨望や憧れに似ていて、どうしたいという欲望も、触れたいという情欲もその実、ない。
ただ、それでも。
あるいは、それが。
――きっと。
 
 
 
 
 
「じゃーん!」
「……どうしたの、それ」
昼休みの教室。弁当を広げたミサキの前にアカリが持ち出したのは、なんとヴァンガードの情報誌だった。
「アカリ、興味あった?」
不思議に首をかしげると、アカリは照れたように笑った。
「うーん、ごめん。実はまだ分かんない」
だろうと思う。
彼女はカードゲームと言えばトランプや花札を連想する種の人間で、間違ってもトレーディングカードゲームに興味がある女の子ではない。せいぜい、ミサキの実家が商売しているもの程度の認識だろう。
そんなアカリが、なぜよりにもよって情報誌を持っているのか。
「ミサキとチームメイトが載ってるってアイチくんに聞いたから、買っちゃった」
「え、アイチ?」
予想外の名前が出てきたことに、思わず目を丸くした。アイチとアカリ。ミサキという接点はあるにしろ、知り合いだった覚えはない。
「最近だけどね。この前購買部の前で会ったから、『うちのミサキがお世話になってます~』って挨拶しといた」
「いつのまに……」
同じ学校なのだから会うこともあるだろうし、顔くらいはミサキを通して知っていたら挨拶くらいはするかもしれない。けれどミサキ達の情報が載っている本の紹介するまでに、仲良くなっていたとは。彼女の交流能力に驚きながらも、なんとなく三和のことを思い出していた。彼女のコミュニケーション能力は、どことなく三和と似ている。
アカリといえば、驚くミサキを余所にぱらぱらと本を捲っていく。そうして、あるページで手をとめた。カードキャピタルの特集記事。そこには自分と、常連客の顔がそろっている。こうして友人にみられると、確かに気恥ずかしいものがあった。
「読むなら家で読んでよ」
「うん、もうじっくり読んだから。それで、一つ質問があるんだけどね」
アカリはミサキの横に顔を寄せる。
そうして、アカリはそっと耳打ちした。
 
「このカイトシキって人が、ミサキの好きな人?」
 
「……」
「ミサキ」
「え? あ、ごめん。もう一度」
「だから、このイケメンさんが好きなの?」
絶句するミサキを前に、アカリは意地の悪い笑みを浮かべた。
「ミサキの好きな人、その、カード仲間?なんて呼ぶのか分かんないけど、とにかくその中にいると思ってたんだ」
「……なんで?」
「女の勘、かな」
アカリはしたり顔で言いながら、パックジュースのストローを開けた。ミサキの箸は、もうずいぶんと前から止まっている。お昼時間は長くないのに、もたもたしていれば食いはぐれてしまいそうだ。だけれど。手が、動かない。
どう、答えたものだろう。
考えて、めぐって、櫂のことを考えた。思い描かれるのは、頬杖をついている横顔か、ファイトをしている背中だけ。
アカリの問いを、否定することもできた。違う、彼はチームメイトだ、勘なんかで適当なことを言うなと冗談めかすこともできた。なのに、言葉が詰まった。
自分の感情が分からなくて。
知っているものが、あまりにも少なすぎて。
「――どうかな」
言葉を落としたミサキに、アカリは困ったように笑う。
お昼の時間は過ぎていくけれど、もう気にもしなかった。
きっともう、なにも喉を通らない。
 
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © katori : All rights reserved

「katori」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]